鈴木之恵は気分が落ち込んでいた。このパーティーにはもう意味がない、ただ皆が飲み食いしているだけだから、部屋に戻ろうと思った。
二階に上がると、階段の所で男性たちが言い争う声が聞こえた。その一つは彼女がよく知っている八木修二の声で、もう一つは間違いなく村上拓哉の声だった。
鈴木之恵が最後の二段を上がって曲がると、廊下の奥で二人の男性が何かで口論していた。
八木修二は眉間にしわを寄せ、蠅が挟まって死にそうなほどだった。
二人とも鈴木之恵の姿を見て、村上拓哉は憤慨して言った。
「お嫂さんに判断してもらおう。こんな理不尽な人いないよ!」
鈴木之恵は自分の名前が呼ばれたのを聞き、ゆっくりと近づいて尋ねた。
「何かあったんですか?」
村上拓哉は公平な判断をしてくれる人が来たのを見て、告げ口モードに入った。
「彼の部屋のエアコンが壊れたから、親切に涼みに来てもらったのに、暑いからって僕の冷感毛布を持って行こうとしてるんです。こんなの貸せるわけないでしょう?」
八木修二は毛布を胸に抱きしめたまま、断固とした態度で言った。
「この毛布は私が先ほど使ったんだ。持って帰って新しいのを買って返すから、そんなに細かいことを気にする必要はないだろう?」
村上拓哉は鼻を鳴らして言った。
「これは毛布の問題じゃないでしょう。少しは道理をわきまえてよ?」
八木修二は村上拓哉が何を言おうと手放す気配はなく、今日はこの毛布を絶対に手に入れるつもりだった。
村上拓哉は怒って足を踏み鳴らした。
「お嫂さん、見てください。あなたはどんな友達を持ってるんですか。大の大人が全く道理をわきまえない。幼稚園児でさえ、自分のものじゃないものは取っちゃいけないって分かるのに、こんな単純なことがどうして通じないんでしょう。」
鈴木之恵は静かに聞いていた。この二人は喧嘩をしているというより、まるで恋人同士の駆け引きのようだった。
「こうしましょう。私にいい考えがあるんですが、聞きたいですか?」
村上拓哉は興味を示した。
「お嫂さん、言ってください!」
鈴木之恵はゆっくりと言った。「こうしましょう。お二人で一つの部屋に泊まれば、エアコンの問題も毛布の問題も解決するし、取り合う必要もなくなりますよ。」
村上拓哉の顔色が青ざめ、次の瞬間、