第175章 お前は自分の人を守り、私は自分の仇を討つ

「風邪はまだ治っていないの?」

藤田深志が近づいてきて、試すように尋ねた。そして彼女のミイラのように包帯で巻かれた手を見て、表情が急に暗くなった。

「手はどうしたんだ?」

鈴木之恵は今、彼と話したくなかった。今の彼女の境遇は全て彼の初恋の人のせいだった。もし彼が毅然とした態度を取らず、秋山奈緒に幻想を与え続けていなければ、秋山奈緒もここまでひどくなることはなかったはずだ。

八木修二が一歩前に出て鈴木之恵の前に立ち、藤田深志という大物と対峙した。

「よく聞けるな。お前の愛人が何をしでかしたのか、帰って聞いてみろよ」

藤田深志は眉をひそめた。秋山奈緒は彼に監禁されているはずだ。八木修二の言葉には根拠がないはずだ。

「お前に聞いているんじゃない。之恵、出てこい!」

彼は八木修二の後ろにいる人に向かって怒鳴った。上位者の態度そのものだった。