電話の向こう側で、秋山泰成は言葉を失った。
電話を切ると、鈴木之恵はその番号もブロックリストに追加し、ゆっくりとお粥を飲み続けた。お椀が空になると、藤田深志とのLINEを開き、数文字を送信した。
「藤田深志、時間があったら返信して。私たち、区役所に行って手続きを済ませましょう。」
病院。
藤田深志は病室で一晩中付き添い、朝になって煙草を吸いに出た時、携帯がいつの間にかマナーモードになっていたことに気付いた。
通話履歴には数件の不在着信があり、'妻'という文字を見た時、彼の眉が少し上がった。その後LINEで鈴木之恵からのメッセージを確認した。
区役所で手続きをしようというメッセージを見た時、まぶたが激しく痙攣した。彼は連絡先を開いて彼女に電話をかけようとしたが、この一晩の出来事を説明する術がないと感じた。