第302章 自虐を求めて

鈴木由典を見送った後、鈴木之恵は心ここにあらずに部屋の片付けをしていると、弘文の驚きの声で我に返った。

「わぁ、すごい!限定の恐竜レゴだ!」

鈴木弘文は新しく開けたブロックの箱を大切そうに抱きしめた。このレゴは今年発売された限定品で、彼はずっと欲しがっていた。前にもママに何度かねだったけど、公式サイトで予約しても当選しなかったのだ。

「ママ、どのおじさんがこんなプレゼントをくれたの?すごいね、限定品まで手に入れられるなんて。」

鈴木弘文は興奮を抑えられなかった。

鈴木之恵は少し黙ってから、

「あなたが会ったことのないおじさんよ。ママが京都府で働いていた時の上司なの。」

鈴木弘文は目を輝かせて、

「じゃあ、ママからお礼を言っておいて。すっごく気に入った!」

鈴木之恵は微笑んで、

「気に入ったなら遊んでいいわよ。」

鈴木弘文は我慢できずに他のおもちゃの箱も開けていった。開けるたびに驚きの連続で、全部彼の好きなものばかり。ロボット、様々な車、ブロック、恐竜……

あっという間におもちゃがリビング中に散らばり、まるでおもちゃ部屋のようになった。

鈴木之恵は頭が痛くなってきた。今回は鈴木由典が染川麻琴を連れてこなかったため、リビングの片付けに相当時間がかかりそうだった。こういった一見些細な作業も、一日中イラストを描くより疲れるものだ。

床に散らばった箱を整理しながら、心の中で藤田深志のことを悪態をついた。あの困った人め、安易に父親面をして。

その時、藤田深志のまぶたが激しく痙攣していた。

先ほどショックを受けたばかりで、今は食欲もなく、もともと胃腸の調子も戻っていないため、なおさら何も食べる気がしなかった。

村上拓哉は沢山の料理を注文した。全て自社開発の新メニューだった。彼が過去の恨みを忘れて藤田深志を食事に誘ったのは、純粋に同情からだった。鈴木之恵がいない数年間、彼があまりにも惨めな生活を送っているのを見かねたのだ。

村上拓哉は彼のその生気のない様子を見るのも嫌になった。今更後悔してどうするというのか?

「食べないなら早く言えよ。食材はタダじゃないんだぞ?」

藤田深志はテーブルに座ったまま、まるで天が崩れ落ちたかのような死人面で、しばらくしてから唇を動かして尋ねた。

「酒はあるか?」