鈴木由典を見送った後、鈴木之恵は心ここにあらずに部屋の片付けをしていると、弘文の驚きの声で我に返った。
「わぁ、すごい!限定の恐竜レゴだ!」
鈴木弘文は新しく開けたブロックの箱を大切そうに抱きしめた。このレゴは今年発売された限定品で、彼はずっと欲しがっていた。前にもママに何度かねだったけど、公式サイトで予約しても当選しなかったのだ。
「ママ、どのおじさんがこんなプレゼントをくれたの?すごいね、限定品まで手に入れられるなんて。」
鈴木弘文は興奮を抑えられなかった。
鈴木之恵は少し黙ってから、
「あなたが会ったことのないおじさんよ。ママが京都府で働いていた時の上司なの。」
鈴木弘文は目を輝かせて、
「じゃあ、ママからお礼を言っておいて。すっごく気に入った!」
鈴木之恵は微笑んで、
「気に入ったなら遊んでいいわよ。」
鈴木弘文は我慢できずに他のおもちゃの箱も開けていった。開けるたびに驚きの連続で、全部彼の好きなものばかり。ロボット、様々な車、ブロック、恐竜……
あっという間におもちゃがリビング中に散らばり、まるでおもちゃ部屋のようになった。
鈴木之恵は頭が痛くなってきた。今回は鈴木由典が染川麻琴を連れてこなかったため、リビングの片付けに相当時間がかかりそうだった。こういった一見些細な作業も、一日中イラストを描くより疲れるものだ。
床に散らばった箱を整理しながら、心の中で藤田深志のことを悪態をついた。あの困った人め、安易に父親面をして。
その時、藤田深志のまぶたが激しく痙攣していた。
先ほどショックを受けたばかりで、今は食欲もなく、もともと胃腸の調子も戻っていないため、なおさら何も食べる気がしなかった。
村上拓哉は沢山の料理を注文した。全て自社開発の新メニューだった。彼が過去の恨みを忘れて藤田深志を食事に誘ったのは、純粋に同情からだった。鈴木之恵がいない数年間、彼があまりにも惨めな生活を送っているのを見かねたのだ。
村上拓哉は彼のその生気のない様子を見るのも嫌になった。今更後悔してどうするというのか?
「食べないなら早く言えよ。食材はタダじゃないんだぞ?」
藤田深志はテーブルに座ったまま、まるで天が崩れ落ちたかのような死人面で、しばらくしてから唇を動かして尋ねた。
「酒はあるか?」