第316章 帰らないでくれないか?

「じゃあ、家に置いておきましょう」

「之恵、バッグを選んでみない?」

鈴木之恵は顔を上げて見渡した。この壁一面の棚は天井まで届き、各区画にはバッグが詰め込まれ、多くにはまだタグが付いていた。一番上の棚は、椅子に乗らないと届かないほどの高さだった。

「藤田深志、実は...これらのデザインは今となっては少し時代遅れよ」

鈴木之恵は正直に言った。女性のバッグは物を入れるためだけのものではなく、ファッションのアクセサリーに過ぎない。それらのバッグは高価で、中には当時の限定品もあったが、それでも時代遅れという事実は変えられなかった。

二人の結婚関係と同じように、たとえ当時どれほどこの関係を大切にしていても、あの出来事の後では元には戻れない。

愛というものは本当に保存がきかない。特に一方だけが努力している状況では。