藤田深志は、これからの人生は妻を追いかける長い道のりになるだろうと感じていた。
助けてくれる人どころか、邪魔をする人ばかりだった。
藤田深志が到着した時、小柳さんが呼んだ警察官も来ていた。
陶山蓮華は自分を品のある人間だと思い込んでいたので、警察官の質問にも上から目線で適当に答えていた。
小柳さんは路上で子供を誘拐しようとする者がいると通報したので、警察は当然、彼女を人身売買犯として取り調べた。
陶山蓮華は軽蔑した表情を浮かべながらも説明せざるを得ず、全く我慢強さのない様子で、
「警察官、私はただあの子供の父親が誰なのか聞きたかっただけです。家族をちゃんと管理するように伝えたかっただけで、私の息子にお金を無心させないでほしいんです。私のどこが人身売買犯に見えますか?私がお金に困っているように見えますか?」
警察官は陶山蓮華と藤田晴香を見回して結論を出した。
「確かにお金に困っているようには見えませんね。でも、金持ちでも悪事を働いて社会に復讐する人はいます。お金持ちだからといって、あなたたちが犯罪者でないとは限りません。路上の監視カメラにも映っていますが、あなたは明らかに不審な動機で、子供に手を出しています。署まで同行していただきます。」
陶山蓮華は生涯を通じて高慢で、五つ星以下のレストランさえ見下して入ろうとしなかった。まして警察署で犯罪者の取り調べを受けるような場所になど、どうして行けるだろうか?
「警察官、何か用があるならここで話してください。私はこの後、会議があるんです。」
警察官は軽く笑って、
「どこで話すかはあなたが選べる立場ではありませんよ。」
そう言って、強制的にパトカーに押し込んだ。
藤田深志は急いで到着し、車のドアを開けて降りた時、ちょうどその場面を目にした。
陶山蓮華は息子を見て救世主を見つけたかのように、息子と話をさせてほしいと叫んだが、警察官はその機会を与えず、すぐにドアを閉めた。
藤田深志はパトカーを見つめ、複雑な表情を浮かべた。
パトカーが去り、染川麻琴はこの状況を見て静かに家に戻った。
残された二人は数メートルの距離を置いて見つめ合い、その後長い沈黙が続いた。
しばらくして、藤田深志は唇を開いて、
「之恵、ごめん。」と言った。