村上拓哉は子供が好きで、特にピンク色の頬をした女の子を見ると、メロメロになってしまう。彼はしゃがんで鈴木弘美に手を振った。
「ねぇ、君は弘美ちゃんって言うんだよね。おじさんはお母さんの大切な友達なんだ。おじさんと一緒に猫を買いに行かない?」
鈴木弘美は顔を上げて鈴木之恵を見た。ママは見知らぬ人からものをもらってはいけないし、見知らぬ人についていってもいけないと教えてくれた。目の前のこの派手な格好のおじさんは見たことがない。猫一匹で騙されたりしない。
「ママが言ってたの。知らない人からものをもらっちゃダメって。いりません」
八木修二は一歩前に出てしゃがみ込んだ。
「ゴッドファーザーと一緒に買いに行こう。どんな種類の子猫が欲しい?」
鈴木弘美はビデオ通話でこのゴッドファーザーを見たことがあった。ママが東京都にいた時によく電話をしていた。彼女は再び鈴木之恵を見つめ、ゴッドファーザーと行きたい気持ちもあったが、ママが許してくれるか心配だった。