第342章 優しすぎて信じられない

村上拓哉は子供が好きで、特にピンク色の頬をした女の子を見ると、メロメロになってしまう。彼はしゃがんで鈴木弘美に手を振った。

「ねぇ、君は弘美ちゃんって言うんだよね。おじさんはお母さんの大切な友達なんだ。おじさんと一緒に猫を買いに行かない?」

鈴木弘美は顔を上げて鈴木之恵を見た。ママは見知らぬ人からものをもらってはいけないし、見知らぬ人についていってもいけないと教えてくれた。目の前のこの派手な格好のおじさんは見たことがない。猫一匹で騙されたりしない。

「ママが言ってたの。知らない人からものをもらっちゃダメって。いりません」

八木修二は一歩前に出てしゃがみ込んだ。

「ゴッドファーザーと一緒に買いに行こう。どんな種類の子猫が欲しい?」

鈴木弘美はビデオ通話でこのゴッドファーザーを見たことがあった。ママが東京都にいた時によく電話をしていた。彼女は再び鈴木之恵を見つめ、ゴッドファーザーと行きたい気持ちもあったが、ママが許してくれるか心配だった。

村上拓哉は少し傷ついた。弘美ちゃんは八木修二のようなおっちょこちょいを受け入れそうなのに、自分は受け入れてもらえない。自分の方が八木修二より格好いいのに。

「弘美ちゃん、私もゴッドファーザーだよ。ゴッドファーザーって呼んでくれたら、猫を10匹買ってあげるよ。どう?」

鈴木弘美は驚いた。自称ゴッドファーザーの太っ腹なおじさんが10匹も子猫をくれるなんて。そうしたら猫の寝床で寝られる!

鈴木之恵は身を屈めて弘美に正式に紹介した。

「弘美、この人はパパの親友で、ゴッドファーザーと呼ぶのよ」

「パパのお友達?じゃあ、ゴッドファーザーがくれる子猫、もらってもいい?」

「いいわよ」

鈴木弘美はママの許可を得て、嬉しそうに手を叩いた。

村上拓哉は母娘の会話を聞いて急に気づいた。藤田深志のやつ、もしかして知ってるのか?疑わしげに鈴木之恵を見ると、彼女は頷いた。

防犯カメラを設置していた作業員が道具をカバンに片付けながら近づいてきた。

「鈴木さん、設置は完了しました。今試してみてください。スマートフォンにアプリをインストールすれば、玄関外の様子をいつでも確認できます。家の中のディスプレイでも見られます」

鈴木之恵は確認した後、支払いを済ませた。