第356章 店を任せきり

鈴木之恵は唇を噛んで微笑んだ。二人の子供はもうすぐ5歳になる。そろそろ彼女も手放しの楽しみを味わってもいいだろう。

「この数日間、弘文と弘美を預かってもらってもいい?」

藤田深志は数秒考え、頭の中で最近の仕事のスケジュールを素早く確認した。外出の予定や付き合いは柏木正に後回しにさせていた。

「二人が望むなら、私は問題ないよ」

「よし、じゃあそう決まりね」

藤田深志の電話が鳴った。彼は表示を確認し、携帯を持ってベランダに出た。

「社長、先日怪我をしたあのモデルの家族が大勢藤田晋司のところに押しかけてきて、今彼は缶詰め状態です」

藤田深志は指先でタバコを挟みながら、淡々と言った。

「あの連中は金が欲しいだけだ。そのモデルと連絡を取って、彼女の要求を聞いて満たしてやれ」