鈴木之恵は怒り心頭でした。
「場をわきまえてよ。目上の人がいるのに、あなたったら……」
鈴木之恵は呆れて、最後に三文字を投げかけました。
「恥知らず!」
藤田深志は終始口角を上げて彼女の様子を見ていました。後ろから抱きしめながら近づいてきて、
「之恵、大したことじゃないよ。何もしてないじゃない、ただキスしただけだよ。おじいちゃんは経験者だから、気にしないよ。明日には忘れてるさ。今の私たちの関係で、キスくらい何の問題もないでしょう?」
鈴木之恵は怒りが収まらず、腰に回された彼の手を振り払いました。
「藤田深志、私たち二人の間にルールを決める必要があると思うわ。こんな風に場所を選ばずに好き勝手するのは止めましょう」
藤田深志は彼女を向き直らせ、二人が向かい合うと、眉を上げて尋ねました。
「どんなルール?」
「これからは不適切な場所での親密な行為は禁止よ。例えばオフィスとか、弘美の前とか。自制心を持って。できないなら、もう私に触らないで」
藤田深志は肩を震わせて笑いました。
「でも、さっきは不適切な場所じゃなかったよ。ここは僕の家だし、家の中ならどこでも大丈夫。昔、錦園にいた時も、ソファーや台所、書斎で……」
鈴木之恵はまぶたがピクピクしました。彼が昔のことを軽々しく持ち出すのに、彼は恥知らずですが、彼女にはプライドがありました。
昔、錦園にいた頃、小柳さんが休暇を取る数日間は、家には二人きりでした。
どこでも二人の戦場となり、彼はその方面での欲求が強く、しばしば場所を考えずに彼女を攻めたてました。しかも、寝室以外の場所の方が、この犬畜生はより興奮するということに気付きました。
顔を赤らめるような光景が脳裏に浮かび、鈴木之恵の耳が再び赤くなりました。
「真面目な話をしているのよ。冗談を言わないで」
藤田深志は少し腰を屈めて、彼女と目線を合わせました。
「之恵、僕も真面目だよ。後でドアのパスワードを変更して、これからはこの家には僕たち二人しか入れないようにする。同じようなことは二度と起こらないよ。これで安心した?」
「外でもキスしたり、手を出したりしないでよ!」
藤田深志は降参しました。
「はいはい、全部君の言う通りにするよ」
鈴木之恵はさらに尋ねました。
「さっきおじいちゃんが下に呼んだ時、何て言われたの?」