今の時間、藤田深志の方は真夜中で、ちょうど夜も更けて人々が静まり深い眠りについている時間だった。
鈴木之恵はベッドサイドのランプを明るくし、彼からの電話を受けて少し驚いた。
「こんな時間にまだ寝てないの?」
藤田深志の関心は彼女の背後の背景にあった。
「之恵、君は私の家にいるの?」
「おじいちゃんのところに行ってきたの。二人の子供たちが今日はパパの家で寝たいって言ったから。」
藤田深志の眉間がピクリと動いた。
「パパの家って何だ、あれは私たちの家だ。」
鈴木之恵は急いで言い直した。
「そうね、私たちの家よ。叔父さんとおじいちゃんが明日京都府に戻るから、見送りに行くつもり。」
藤田深志は彼女の言葉が適当だと感じたが、どうすることもできなかった。
「叔父さんから聞いたよ、明日の飛行機のチケットのことを。」
鈴木之恵は聞きたくても聞けなかった質問をした。
「おじいちゃんが今回病気になって、なんだか性格が大きく変わったように感じるんだけど。以前は病気でも楽観的だったのに、今日私に鍵を一つくれて、京都府のマンションと、そこに保管されている彼の長年のコレクションを全部弘文と弘美にあげるって言ったの。」
藤田深志は長い間黙っていてから言った。
「あのマンションの中のものは彼の最後の宝物だ。おじいちゃんは君を信頼しているんだ。君が預かっておいて、二人の子供たちが大きくなったら渡してあげてくれ。」
藤田深志は言い終わると、ため息をついた。
「君を抱きしめて寝たくてたまらないよ。」
「そっちはどう?兄と一緒にいるの?」
藤田深志はうなずいて言った。
「君のお兄さんは隣の部屋にいるよ。もうすぐ帰れる、私たちを待っていてくれ。」
鈴木之恵の表情が真剣になった。
「警察はもうすぐ行動を起こすの?」
藤田深志は言えなかった。ノックの音がして、彼はドアの方を見た。
「之恵、もう遅いから寝なさい。明日の朝は子供たちを連れて下の階で朝食を食べるといい。おじいちゃんの冷蔵庫には食べ物がたくさんあるから。」
電話を切ると、藤田深志はドアを開けた。鈴木由典がボディガードを連れて入り口に立っていた。
藤田深志はシャツのボタンを留めながら言った。
「出発するの?」
「早めに行って、周辺の地形状況を観察する時間を多めに取りたい。」