時間がどれだけ経ったのか分からないが、藤田深志の心の中にはただ一つの信念があった。それは耐え抜くということだ。
何度も何度も耐え抜けば、きっと良くなる。
この世界に彼が越えられない壁はない。死さえも恐れないのだから、他のことなど恐れるはずがない。
藤田深志は歯を食いしばり、強い意志で体内の狂躁と渇望を抑え込んだ。汗が浮き出た青筋に沿って大粒の滴となって落ちていく。
主寝室。
鈴木之恵は寝返りを打ち、隣の空っぽの枕に手を伸ばした。彼女は夢を見ているのかと思い、目を開けると確かに彼がいないことに気づいた。隣の布団は少し角が持ち上がっていた。
「深志?」
鈴木之恵は浴室の方向に向かって小さな声で呼びかけたが、何の返事もなかった。
彼女は布団をめくって床に降り、浴室を見たが藤田深志の姿はなかった。
今は午前三時、彼がどこに行ったのか分からなかった。彼は足に怪我をしているので、夜中に外出するはずがない。
鈴木之恵はドアを開けて階下に降り、二階に来たとき書斎の方向を見たが、電気が消えていたので中にはいないようだった。彼女はそのまま一階に行き、あちこち探したが藤田深志の姿は見当たらなかった。
鈴木之恵は心配になり、主寝室に戻ると、彼の腕時計と携帯電話がきちんとベッドサイドに置かれているのを見た。また、先ほど一階の玄関でも彼の外出用の靴が玄関に置かれているのを確認していた。
彼女はベッドに座って数分考えた後、再び階下に降りた。
コンコンコン!
鈴木之恵は試しに書斎のドアをノックした。この家の中で、藤田深志がどこにいるのか想像がつかなかった。まさか人がいなくなるわけがない。
彼女がしばらくノックしたが、中からは何の反応もなかった。
「深志?」
鈴木之恵が手を上げて再びノックしようとしたとき、ドアの鍵がカチッと音を立てて中から開いた。
藤田深志はようやく電気をつけ、背後は明るく照らされていた。彼はドアの入り口に立ち、光を背にしていた。
鈴木之恵は彼の真っ赤な目と、額に浮かぶ汗の粒を見た。
「深志、どうしたの?」
鈴木之恵は一歩前に進み、手を伸ばして彼の額の汗を拭った。彼の様子がおかしいことに気づき、鈴木之恵の心は不安で一杯になった。
彼女は、おじいさんが亡くなったことが原因で、彼の心の病が再発したのではないかと考えた。