結城暁からの電話だと分かり、南雲泉は考えることもなく、すぐに切った。
「なぜ出ないの?」と桐山念が尋ねた。
「出たくないの。出たら逆に気分が悪くなるから」
桐山念は同意して頷いた。「私もそう思う」
一方、結城暁は胸に怒りを溜め込んでいた。特に南雲泉に電話を切られた後は。
彼は二度目の電話をかけた。
三度目の電話も。
結果は例外なく、すべて南雲泉に容赦なく切られた。
結城暁が再び電話をかけようとした時、自分がブラックリストに入れられていることに気付いた。
すぐにLINEを送った。「ブロック解除して」
南雲泉は故意に分からないふりをした。「何を解除するの?」
「ブラックリストから外して」
あぁ、気付いているのね。
それならなおさら良かった。今の彼女は機嫌が悪く、彼をブラックリストに入れたままにしておきたかった。
気分が良くなったら、その時に解除しよう。
タピオカミルクティーを飲み終わり、二人は買い物を続けた。
目に入ったのは非常に大きな店で、中には様々な美しいドレスが並び、デザインもとても斬新だった。
南雲泉と桐山念は一目見て気に入り、二人は興奮して店内に入った。
すぐに、南雲泉はアプリコット色のシフォンのミニドレスを選んだ。
ドレスの生地は特に軽くて透け感があり、触り心地も非常に良く、南雲泉は一目見た瞬間に気に入った。
さらに重要なことに、このドレスは腹部のデザインが完璧で、お腹が全く目立たず、彼女にぴったりだった。
南雲泉は店員の案内でドレスに着替え、出てきた時すぐに声をかけた。「念、どう?きれい?」
「……」
意外にも、返事がなかった。
「念?」南雲泉がもう一度呼びかけたが、桐山念は側にいなかった。
彼女はドレスを着たまま、あちこち探し回り、最後にメンズコーナーで桐山念を見つけた。
南雲泉が近づいた時、桐山念は目の前の青いスーツを丁寧に触っていた。彼女の表情は真剣で、時々眉をひそめ、時には眉を緩めて笑顔を見せていた。
おそらくあまりにも真剣だったため、南雲泉が隣に立っていても、桐山念は気付かなかった。
桐山念が見終わるまで、店員がすぐに笑顔で近づいてきた。「お客様、お目が高いですね。このスーツは今日入荷したばかりの限定品で、生地も裁断も……」