第108章 結城暁、行かないで

「すぐに行きます」

結城暁は冷たい表情で電話を切った。

その時、南雲泉は不思議な勇気が湧いてきて、突然結城暁の前に飛び出し、怒った猫のように両腕を広げて彼を遮った。

「南雲さん、何をしているんだ?」

「行かせません」南雲泉は頭を上げ、強情に彼を見つめた。

結城暁の表情が一層冷たくなり、断固とした声で言った:「どけ」

「言いましたよね、行かせないって」

「結城暁、あなたは私の夫で、私たちは夫婦です。私たちの結婚を壊す第三者に会いに行くなんて、許せません」

「第三者」という言葉が、ついに南雲泉の口から力強く発せられた。

これまで、どんなに怒っていても、どんなに腹が立っていても、結城暁の前で藤宮清華のことを罵ったことは一度もなかった。

でも今回は、もう我慢する必要はない。