お風呂から出てきた南雲泉。
結城暁がまだいるとは思わなかった。同じ部屋にいても、もう二人の間には共通の言葉がないかのようだった。
南雲泉は髪を洗い、まだ水滴が垂れていた。
タオルで髪を拭きながら、結城暁を避けて通り過ぎようとした。
「手伝おうか」結城暁が近寄ってきた。
「結構です。自分でできますから」
髪を乾かし終わると、南雲泉はベッドに入った。
その時、結城暁はもう部屋を出ていた。
南雲泉は彼の去っていく背中を見つめ、突然涙があふれ出した。
泣かないと決めていたのに、涙はまるでスイッチがあるかのように、ある神経に触れた途端に自動的に流れ出し、もう止められなかった。
彼のプライドの高さを知っていた。どうして彼女の冷たさや疎遠な態度に耐えられるはずがあろうか。
彼はいつも周りから注目を集める存在で、人に取り入られることはあっても、人に取り入ることなど一度もなかったのだから。