質問を終えると、南雲泉は深く息を吸い込み、必死に感情を落ち着かせようとした。
なぜか、この質問をした時、彼女は何か漠然とした期待を抱いていた。
本当に狂ってしまったみたい。
「桐山念がここで撮影をしていると聞いて、司瑛人が差し入れに来たんだ。私は離婚したばかりで気分が悪かったから、彼が気晴らしに誘ってくれたんだ」
「ホテルに着いたら、二人の女性が抱き合って泣き叫んでいるのを見かけて、その中の一人があなただった」
結城暁は平然と言い切った。
嘘から出た誠というか、彼の嘘をつく能力は今や完璧の域に達していた。
この手は見事だ。全て司瑛人のせいにして、きれいに逃げ切った。
しかも、この説明は理にかなっていた。確かに念はここで撮影をしていたし、彼女と司瑛人は恋人同士だから、司瑛人が会いに来るのも不自然ではない。