第168章 密かな愛を心に秘めて

その言葉を聞いて、南雲泉は思わず微笑んだ。

もう随分と長い間、誰からもこんな風に聞かれることはなかった。

彼のことを愛しているのか?

愛している。

もちろん愛している。

十年間ずっと愛し続けてきた。

たとえ離婚したとしても、この日々の中で、毎晩、彼のことを想い、慕い、愛し続けてきた。

あれほど深く、あれほど痛いほどに、愛さずにはいられないではないか?

風が南雲泉の細い髪を揺らす中、彼女は微笑んで髪を軽く掻き上げ、瀬戸奏太を見つめ、先ほどの質問に真摯に答えた。

「愛しているわ、もちろん愛しているの」

少し俯いて、南雲泉は柔らかな声で続けた。「十年間愛し続けてきたの。愛さずにいられるはずがないでしょう?」

十年!

その言葉は瞬時に瀬戸奏太の心に深く刻み込まれた。

十年もの間?

彼女の眼差しから、まなざしから、一挙手一投足から、彼女が結城暁を愛していることは早くから見て取れていた。

しかし、彼女がこれほど長い間、十年もの間愛し続けていたとは、予想だにしていなかった。

十年か。人生にいったい何個の十年があるというのだろう!

特に女の子にとって、青春時代はたった一つの十年に過ぎないのに。

それなのに、彼女はそのすべてを結城暁という男に捧げ、心の中も、目に映るものも、すべてがその男のことばかりだった。

その瞬間、瀬戸奏太は南雲泉を見つめながら、突然異常なほどの平静さを感じると同時に、胸が痛むほどの思いに駆られた。

おそらく十年後も、さらにその先も、彼女の愛する人は、あの青春時代の少年のままなのだろう。

そして彼自身は、時の流れの中の一握りの砂に過ぎないのかもしれない。

今、彼は心から感謝していた。ずっと友人という立場で彼女と付き合ってきたことに、そして一度も自分の気持ちを表に出さなかったことに。

もしそうでなければ、おそらく友人としての関係さえ保てなかっただろう。

思いもよらなかった。戦場で敵を震え上がらせるほどの存在だった瀬戸奏太が、こんな日が来るとは。こんなにも不安な気持ちになるとは。

「奏太、話を聞いてくれてありがとう。あなたと話をしたら、気持ちが随分楽になったわ」

「でも、今話したことは、私の長年の秘密なの。あなたに打ち明けたけど、内緒にしておいて欲しいの」

瀬戸奏太は驚いて尋ねた。「彼は知らないのか?」