第123章 唇の傷が引っ張られる

「離せ!」

藤原月は低い声で命じた。

「離さない、藤原月、あなた...んん...」

唇の傷が引っ張られ、思わず痛みで呻いた。

藤原月のキスは、その呻き声でさらに激しくなり、先ほどの優しい吸い方は彼のものではないかのようだった。

高橋真子は思わず彼のシャツをぎゅっと掴み、やっと彼のキスが首筋に移った時に、唇の痛みから立ち直れた。

一瞬、藤原月は諦めて、痛めつけてやろうかとさえ思った。

しかし、すぐに彼女の可愛らしい呻き声に心が柔らかくなり、彼女の額に額を寄せて息を整えるしかなかった。

しばらくして、やっと体内の血の昂ぶりを抑え、かすれた声で尋ねた:「なぜ少しの信頼も与えてくれないんだ?ほんの少しでもダメなのか?」

高橋真子は痛みを堪えて唇を噛み締め、よだれが出そうになった。

しかし瞬時に、藤原月の親指が彼女の唇に押し当てられ、優しく言った:「噛むなと言っただろう。」

「あなたのよだれよ!」

高橋真子は不満そうに小声で抗議した。

藤原月は低く尋ねた:「どうして僕のだと分かる?君のかもしれないよ?」

「...」

高橋真子は顔を真っ赤に染め、熱くなって、言葉が出なかった。

藤原月は突然気分が良くなり、優しく彼女の唇の端のよだれを拭いながら:「少しだけ信頼してくれないか?」

「他のことは全部信頼してるわ。」

高橋真子はそう言って、口を閉じようとした時、突然彼の指を噛んでしまった。

藤原月は一瞬でアドレナリンが急上昇し、しばらく名残惜しそうに手を彼女の唇から離した。

高橋真子は手を上げて彼の手を払い、藤原月もそれを下ろすしかなかった。

「藤原月、今回帰ってきて、あなた前と違うわ。」

高橋真子は顔を上げて彼を見た。たった今キスで絡み合ったばかりなのに、彼女の目は特別に澄んでいた。

藤原月は彼女が怖いほど冷静だと感じた。たとえ彼女の呻き声がどんなに可愛らしく、か弱くても。

「どこが違う?」

彼は彼女の髪を肩の後ろまで優しく撫でながら、静かに尋ねた。

「前は感情面でとても一途だった。あなたたちが付き合うのを私は目の当たりにしたわ。」

高橋真子は言った。

藤原月はこれを聞いて、心を激しく抉られたような気がした。

「あなたは前は小林詩織以外誰も見向きもしなかった。でも今は...」

「まだ僕を信じていないんだな!」