第170章 彼は欲望を満たしたいだけ

「お腹が空いているの?」

藤原月は立ち止まって彼女に尋ねた。

「はい!」

高橋真子は彼の黒い瞳に隠しきれない熱い視線を感じ取り、即座に賢明な返事をした。

藤原月はため息をつきながら、仕方なく椅子を引いて彼女の隣に座った。「じゃあ、先に食事にしよう」

高橋真子の心臓は、一拍一拍、特に強く鼓動していた。

彼は最もセクシーな手つきで、彼女にスープを注いでいた。

でも彼はまだ何か別のことをしたそうだった。高橋真子は助けを求めたかったが、誰に助けを求められるのか分からなかった。

それとも……

高橋真子は少し考えてから、突然言った。「私、生理中なの」

「え?」

藤原月は一瞬固まり、それから眉をひそめた。

「だから今夜はできないの」

高橋真子はそう言うと、スプーンを手に取り、うつむいてスープを飲み始めた。

彼の作るスープは本当に一流で、七つ星ホテル並みだった。

しかし藤原月は何も食べる気がしなくなり、ただ彼女が楽しそうに食べているのを見ながら、おかずを取り分け、スープを注ぐだけだった。

高橋真子は食事はあまり進まなかったが、スープはたくさん飲んだ。

しばらくすると二杯のスープを飲み干し、藤原月の前のスープがまだ手つかずなのを見て、尋ねた。「どうして飲まないの?」

「……」

藤原月は黙ったまま、意味ありげな視線を送った。

高橋真子は文字の仕事をしているせいか、ボディランゲージについて詳しすぎるのか、彼の大きな不満を感じ取った。

でも実際、推測するまでもなく分かっていた。

彼は欲望を満たしたがっていた。

でも、なぜ彼の思い通りにならなければいけないの?

これまでずっと彼の言いなりだった。

もう二度とそうはさせない。

彼女が心の中で決意を固めていると、藤原月はイライラしながらワインを注ぎに行った。

高橋真子は彼がワインを二杯持ってくるのを見て、告げた。「生理中はお酒は飲めないの」

藤原月は……

高橋真子は彼が一杯をテーブルに置き、もう一杯を一気に飲み干し、それからテーブルの上の分も飲むのを見ていた。

一気飲みするように。

彼が頭を後ろに傾けて飲む時、彼の喉仏が動くのが見え、彼女の心臓も一緒に動いた。何度も。

なぜか、彼の中に簡単にそういう輝く部分を見つけることができ、人を赤面させ、心臓を高鳴らせるのだった。