第190章 指輪を付けるのを拒否する

「つまり、私は去るどころか、藤原月との結婚式を無事に挙げるわ。これからは藤原家の奥様に対して丁寧に接してほしいわね」

高橋真子は断固として彼に告げた。

小林輝は彼女の肩を掴む手に力を込め、彼女を壁際に追い詰めた。「真子、藤原月という男は君にとって最高の選択肢じゃない」

「でも、小林社長が十人いても藤原月一人には及ばないわ」

高橋真子は冷たく返した。

藤原月がエレベーターから出てきた時、小林輝が高橋真子を壁に押し付けているのを目にした。

高橋真子は彼が来るのを見て、内心ほっとしながら小林輝に言った。「また殴られることになるわよ」

「何だって？」

小林輝が疑問を呈した時、背後から聞こえる足音に反射的に振り返った。

しかし何も見えないうちに、藤原月が大股で近づいて彼を掴み、強い拳が彼の顔面に叩き込まれた。

「あっ！」

小林輝は強い衝撃を受け、斜め向かいに倒れ込んだ。

藤原月は高橋真子の手を掴んで後ろに引き寄せ、冷たい声で小林輝に尋ねた。「小林社長、肋骨は治ったようですね？」

小林輝は突然恐怖に駆られて彼を見つめ、藤原月が長い脚を一歩踏み出すと、怯えて身を守るように体を丸めた。

小林輝は、藤原月が高橋真子とこれほど深く関わっているとは思いもよらなかった。

彼は当初、高橋真子が今頃きっと路傍の鼠のように怯えて外出もできないほど惨めな状態だろうと思っていた。女性は弱っている時が一番なだめやすいから、簡単にベッドに誘えると考えていたのだ。

しかし、このような結末は予想外だった。

「そんな人に手を汚す必要はないわ。中に入りましょう」

藤原月が再び彼を殴ろうとした時、高橋真子は藤原月を引き止めてそう言い、ドアを開けて彼を中に引き入れた。

小林輝は壁際で頭を抱えたまま縮こまっていたが、高橋真子がドアを開ける音を聞いてから数秒後、やっと恐る恐る部屋の中を覗き見た。

藤原月は中に入ると、彼女に尋ねた。「怪我はなかったか？」

「あなたが間に合ってくれたわ」

高橋真子は心の中で、もし彼が突然来なかったら、小林輝は前回のように彼女を暴行したかもしれないと思った。

以前の出来事を思い出し、高橋真子は小林輝という人間が本当に異常だと感じた。なだめられないと暴力を振るい、暴力を振るった後でまたなだめられると思っているなんて。