第208章 好き

これは、因縁の出会いというものか?

彼女は勇気を振り絞って中に入った。

大和田瑞は丸刈りにして、カジュアルなスーツを着て立っていた。彼女を見る目があまりにも暗かった。

高橋真子は藤原月が10分で到着すると言ったことを思い出した。今はもう2分は経っているはずだ。今の状況なら、この数分の間に命を落とすことはないだろうと考えた。

小林詩織は子供の死を彼女のせいにしているが、この人は?

小林詩織は彼の命のようなもので、詩織の言葉は勅命のように彼にとって絶対的なものだった。

しかし予想外にも、大和田瑞は彼女に頷いた。

高橋真子は心臓が乱れたが、できるだけ落ち着いて、軽く頷いて「ケーキを買いに?」と言った。

「詩織さんはこの店のケーキが好きなんです」

大和田瑞が答えた。

高橋真子は頷いた。