第183章 ダーリン、怖いの

「あなた!」

高橋真子は思わずその言葉を叫んだ。

藤原月はベルトを外す動作を止め、彼女の方に戻って来て、顔を優しく撫でながら囁いた。「もう一度言って。」

「あなた!」

高橋真子は心の中で泣きそうになった。こんなに追い詰められるなんて。

藤原月は突然心が溶けるように柔らかくなり、彼女の手を離して眉や目にキスし、唇にもキスした。

高橋真子は怯えて小さな声を漏らし、彼を押しのけようとしたが、藤原月は彼女の手をソファーの中で絡め取り、キスは彼女の肌から離れることはなかった。

高橋真子はめまいを感じ、思わず彼の名を呼ぼうとしたが、一文字も発する前に、彼は突然彼女の唇を塞いだ。「もう一度呼んで。」

「藤原月...あっ、あなた。」

肌に痛みを感じ、高橋真子はすぐに素直にそう呼んだ。

「いい子だ!」

藤原月はキスしながら満足げに褒めた。

高橋真子は自分が子供扱いされているように感じた。「いい子」と言えば何でも言うことを聞くと思っているのか?

胸が冷たくなるのを感じ、高橋真子は我に返り、絡み合う手で彼の手を強く握りしめながら囁いた。「藤原月、やめて。」

「自分の妻にキスしているだけだよ。」

「藤原月、私、死んじゃう。」

高橋真子は恐れおののいて言った。

藤原月は深いため息をつき、突然腕を彼女の細い腰に回して抱き寄せ、促した。「もう一度『あなた』って呼んで?」

高橋真子は心の中で罵りたかったが、怖くてできず、ただ甘えるように目を潤ませ、泣き声を含んで「あなた、怖いの。」と言った。

藤原月は彼女のそんな甘えた様子を見て、さらに火がついたように、歯の間から絞り出すように言った。「本当に殺してやりたい。」

「『あなた』って呼んだら...」

「何だって?何も約束してないよ!」

藤原月は彼女をソファーから抱き上げ、そのまま階段を上がって行った。

高橋真子は怖くて心が乱れた。彼に騙されたと感じた。

あれだけ「あなた」と呼んだのに、結局ベッドに連れて行かれるのは避けられない現実だった。

すぐに、彼女はまた惨めに、甘えるように熱い涙を目に溜めた。

藤原月は彼女を見下ろして一瞥した。「後で泣けばいい。」

うぅ!

どういう意味?