第10章

だから渡辺健一の山田奈々への思いは最初からお見通しだった。でも、火は紙に包めないように、私が入社した初日に山田奈々は私と彼の関係が普通ではないことに気付いてしまった。

そのため山田奈々は私に嫌がらせをし、彼は山田奈々の機嫌を取るために彼女と一夜を共にしたのだ!

あの夜、彼が私の代わりに酒を飲んだあの夜だったのだ!

私がまだ申し訳なく思っていたなんて!

吐き気がする。彼も山田奈々も本当に気持ち悪い。

「彼氏?本当に彼氏がいるの?」兄はこれを聞いて、急いで私の手を引っ張って聞いた。「両親には言ったの?」

「言ったわ。今から彼を連れて帰るところ」私は振り返って松本遼に手招きをした。「この人が私の新しい彼氏よ!松本遼」

松本遼は空気を読むのが上手で、婿養子になる素質十分。小走りで私の側に来て、素直に「お兄さん、こんにちは」と挨拶した。