夏川家は案の定心を動かされ、夏川和子が私に電話をかけてきて探りを入れてきた。
「辰くん、うちの両親がこのプロジェクトはいいって言ってるんだけど、どう思う?」
夏川和子は相変わらず私を昔の田中辰也だと思っており、この頃の私の様子の変化に気付いていなかった。
私は会社の帳簿を確認しながら、夏川和子の目を褒めた。
「確かにいいプロジェクトだよ。浜市の市政府もかなり重視しているって知ってる」
夏川和子は大喜びで、私に隠すこともなく両親に電話すると言い出した。
私はもちろん賛成した。夏川家はここ数年、虎の威を借る狐のように、田中家の名声を利用して色々とやってきた。
今こそ彼らに教訓を与える時だ。
「お父さん、お母さん、田中辰也が言ってたんだけど、現地もこのプロジェクトを重視してるんだって」
「早く投資しないと、うまい話にありつけなくなっちゃうわ」
私は夏川和子を無視して、田中秘書に会社の帳簿を整理して送るように指示した。
「田中社長、これが最近の会社の帳簿です」
私は「うん」と答え、田中秘書が送ってきた帳簿を開いた。
彼女が電子帳簿を送ってきて、自身も来たのを見て、この期間にきっと色々なことが起きたのだろうと即座に察した。
「何かあったのか?」
田中秘書は急いでこの期間の出来事を説明した。
「デザイン部の主任のことで、多くの人が怒っています」
「自分の立場を...をかさにきて、誰も眼中にないような態度です」
「新人デザイナーたちの作品は良いものばかりなのに、山本海斗が意地悪く難癖をつけています」
「最も深刻なのは、先日の社内デザインコンペで山本海斗が金賞を取ったことです」
「でも私が最近調べたところ、山本海斗の作品は盗作だったんです!」
私は顔を曇らせた。山本海斗が会社で手抜き仕事をしているだけならまだしも、ゆっくりと対処できた!
しかし今や田中家の会社を混乱に陥れている。私がまだ死んでもいないのに、もう遺産相続の算段をしているというわけか!
「どれほど傲慢なのか、見てやろうじゃないか!」