第12章

翌日、松本昇太は配信を始めた。

松本光男は依然として意識不明の状態で、医師の説明によると生命の危険はないものの、頭部の怪我によるものか、あるいは強いショックで目覚めたくないのかもしれないとのことだった。

松本昇太は懸命に身なりを整え、自分なりにかっこよくて脆弱な感じを演出して配信を開始した。さらに、涙が出ないことを心配して、玉ねぎと清涼油を紙に染み込ませ、目と鼻を何度も拭った。

配信開始から数分で、松本昇太は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。

「みなさん、私は動物園での人食い事件の当事者です。最愛の妻は亡くなり、賢い息子は今もベッドで横たわったまま、いつ目覚めるかもわかりません。うちは普通の家庭で、動物園に息子の治療費を出してもらおうと思ったのですが、動物園は虎に襲われたのは自業自得だと言うばかりです。」