野村香織は後ろによろめいて一歩下がった。腰の力がまだ大丈夫だったから、小村明音に押し倒されずに済んだ。香織は彼女の手のひらを軽く引っ掻きながら、小さな声で言った。「あなたのクールな設定、三秒で崩壊ね」
近くにいた富田玲香は急いで顔を背けた。もう見ていられなかった。幸い今日のパーティーには身内しか来ていないから、誰かに撮影されてネットに投稿される心配はなかった。
「クールな美少女、お誕生日おめでとう~」そう言って、香織は丁寧に包装された贈り物を渡した。
小村明音は目を輝かせながら、プレゼントを受け取って甘く言った。「えへへ、ありがとう、ダーリン~」
野村香織:「……」
柴田貴史:「……」
言い終わると、小村明音はさらに香織にキスしようと飛びかかってきたが、香織は華麗なターンで避けた。「香織ちゃん、逃げないでよ。キスしたって妊娠しないでしょ」
香織は嫌そうに言った。「明音さん、イメージに気を付けて」
「そうそう、紹介したい人がいるの。早く来て」小村明音は遊びを止めて言った。
香織は不思議そうに「どんな人?」
「誰だと思う?もちろんイケメンよ」そう言いながら、小村明音は香織に「信じて」という目配せをした。
香織は呆れて言った。「また何か企んでるでしょ!」
二人が話している間に、小村明音は香織を杉村俊二の前まで連れて行った。隣人の杉村俊二だと分かった時、香織は本当に驚いた。
小村明音は笑って言った。「はい、紹介するわ。このイケメンは杉村俊二、柴田貴史の大学の同級生よ」
そして、杉村俊二の方を向いて「彼女は野村香織、私の親友よ」
香織は微笑んで「杉村さん、また会いましたね」
杉村俊二も笑って「ええ、また会いましたね」
杉村俊二の声を聞いて、香織は心地よさを感じた。この男性の声は本当に心地良かった。そして初めて会った時と同じように、彼は熱い視線で彼女を見つめていた。まるで優しい男性のように見えた。
小村明音は驚いて「え、あなたたち、もう知り合いだったの?」
「私たち、お隣同士なの!」香織は急いで言った。小村明音が変な想像をして、また何か突拍子もない言葉を口にするのを恐れて。
「あぁ、杉村俊二さんが、あの豪邸の壁に苔が生えても気にしない金持ちの隣人だったのね?」小村明音は納得したように言った。