「もう言うことないの?」野村香織は詰問するように言った。
そう言うと、車のドアを開け、中に飛び込んで、スマートフォンをホルダーに取り付け、スピーカーフォンをオンにした。
青木翔は答えた。「あー...誤解しないでください。実は一緒にリスクを分担したいだけなんです。他意はありません。」
「誤解してないって言ってるのに。私のことを知ってる人なら分かるはず。数千万の投資どころか、数億だって私にとっては大した負担じゃない。あえて私に負担があるとすれば、それは私から一杯掻っ攫もうとする競合他社よ。私の目には、そういう競合こそが最大の敵。まるでハエみたいなものね。」野村香織は意味ありげに言った。
青木翔は舌打ちした。彼だって馬鹿じゃない。野村香織が遠回しに彼を侮辱していることは分かった。野外トイレに集まるハエに例えられたのだ。