第127章 深夜のヘッドライト

今夜は年越しであり、柴田貴史が小村明音にプロポーズして成功した夜でもあった。会場の雰囲気は和やかで、全員が楽しく盛り上がっていた。お酒を飲む人、おしゃべりする人、歌を歌う人、それぞれが思い思いに楽しんでいた。

午前1時まで宴は続き、野村香織もかなりお酒を飲んでいた。彼女は酒に強い方だったが、少し酔っぱらっていた。

小林輝明が自ら護衛を買って出たが、彼女は代行運転を頼んでいることを理由に断った。そのため、小林輝明は残念そうな顔で彼女を見送るしかなかった。

……

車内で、野村香織はしゃっくりをし、コートを体にぐっと巻き付けて、そっと車のドアに寄りかかった。窓越しに、通りにはまだ多くのカップルが歩いているのが見え、若者は本当に寒さに強いものだと感心した。

まだ雪は降っていなかったが、今は冬で、しかも午前1時過ぎ。外気温は一桁になっていた。この気温では散歩どころか、息を吐くだけでも心まで冷えるような寒さだった。

野村香織は代行運転手を見た。若々しい顔立ちで学生風の髪型をしており、おそらく近くの大学生だろう。若い運転手がバックミラーを見上げると、鏡の中で視線が合い、野村香織は髪をさらりと撫で上げ、微笑みかけた。

瞬時に、若い運転手は耳まで真っ赤になった。野村香織は口角を上げ、この若者がなかなか可愛らしいと感じた。容姿は平凡だが、見ていると清々しい感じがした。質素だが清潔感のある服装で、眉間には若くして大人びた雰囲気があり、それでいて初々しさと世間知らずな様子も残っていた。

若い運転手が落ち着かない様子を見て、野村香織は視線を外した。これ以上からかうと交通事故の危険があるし、若いファンをからかうより自分の命の方が大切だった。

……

花浜ヴィラ。

代行運転の若いファンの護衛の下、野村香織は無事に家の玄関まで帰り着いた。彼女の色っぽい視線一つで、若いファンは自転車に乗って煙のように逃げ去った。この姉さんは妖艶すぎて、若い彼には手に負えなかったのだ。

代行運転手を見送った後、野村香織は運転席のドアを開け、車をガレージに入れようとした。ちょうどドアを開けた瞬間、彼女の目を眩ませそうな車のライトが照らしてきた。