第189章 舌戦

母親を頼りにできることで、天満奈津子の心は少し落ち着いたものの、まだ自信はなかった。野村香織がどれほど手強いか、彼女はよく分かっていたからだ。

相田珠美は天満奈津子の額を指で突きながら言った。「あなたときたら、なんて気の小さい子なの。野村香織一人にそんなに怯えるなんて。私、相田珠美がこんな役立たずの娘を産んでしまうなんて。」

天満奈津子は目を伏せ、何も反論できなかった。自分の母がどれほど恐ろしいか、よく分かっていた。河東の名家の中でも、相田珠美は一目置かれる存在だった。

……

午後3時頃、野村香織は天満家の別荘のドアを押した。すると相田珠美が待ち構えていたかのようにドアを開けた。

相田珠美を見て、野村香織は礼儀正しく言った。「天満夫人、お元気でいらっしゃいましたか?」

相田珠美は冷笑して言った。「あなたのおかげで、とても元気よ。それにしても野村さん、以前より一層綺麗になられただけでなく、手口も一段と巧妙になられましたね。」

この言葉を聞いても、野村香織の表情は変わらず、笑顔を保ったまま言った。「過分なお言葉です。確かに私は美しくなりました。元々の素質がありますから。でも手口に関しては、天満さんには到底及びません。普通の人には天満さんのような巧妙な方法は思いつかないでしょう。」

二人は言葉を交わしながら、表面は穏やかでも内心は険悪な様子を見事に演じていた。相田珠美は眉をひそめた。彼女も馬鹿ではない。野村香織の言葉の裏に天満奈津子を愚かだと嘲笑う意味が込められているのは明らかだった。しかし、相手は皮肉を込めて言っているだけで、母親として怒りを表すこともできなかった。

目を動かしながら、相田珠美は天満奈津子の代わりに反撃した。「野村さんのお褒めの言葉恐縮です。うちの奈津子は若くて血の気が多いもので、行動が衝動的なんです。ある方のように、腹黒くないものですから。」

野村香織は相変わらずの笑顔で言った。「天満夫人、記憶力が少し衰えていらっしゃるのではないですか?」

自分の年齢をほのめかされたと感じた相田珠美は、表情を冷たくして言った。「私が年寄りだと言いたいの?」