第186章 理由のない心の痛み

最初、彼は野村香織を連れて行くつもりはなかったが、渡辺奈美子の提案で、このような重要な場面で、新婚間もない二人が一緒に出席することで重視している姿勢を示せると言われ、そのため野村香織を連れて行くことにした。

ただ、その頃は彼は野村香織に対して大きな誤解を持っていたため、彼女を見るたびに反感と嫌悪を感じていた。そして当時、渡辺奈美子は野村香織を見下していたにもかかわらず、彼の前では常に野村香織の味方をしていた。今思えば、渡辺奈美子は本当に計算高い女だったと感じる。

その日の誕生祝いの宴会で、二人は一緒に行ったものの、彼は終始野村香織と距離を置いていた。宴会が半ばを過ぎた頃、騒がしくなり始め、青木翔に強引に引っ張られて見に行くと、野村香織が全身ケーキのクリームまみれで立っているのを目にした。