渡辺奈美子が前に駆け寄り、二見碧子を制止した。「もういいわ、お母さん。ここで騒ぐのはやめましょう。ここは法執行機関なんですから。大事になったら、私たちも困ることになります」
娘の言葉を聞いて、二見碧子は冷たく鼻を鳴らした。手は出さなかったものの、野村香織を見つめる目は憎しみに満ちており、手入れの行き届いた年配の顔には憎悪の色が浮かんでいた。
野村香織は少しも怯むことなく彼女と視線を合わせ、美しい顔に落ち着いた笑みを浮かべていた。渡辺家に嫁いで三年、この年配の女性に虐げられ、疎外され続けた三年だった。今や彼らとは何の関係もない。もう彼女に気を遣う必要もなかった。
「野村香織、よくやったわね。本当によくやった。今回のことは渡辺家として覚えておくわ。どうなるか見ていなさい!」二見碧子は歯を食いしばって言った。