第205章 楽しい会話

野村香織は笑って言った。「食事はいいけど、私が奢らせてもらうわ。」

それを聞いて、川井若菜は首を振った。「いいえ、いいえ、私はキャリアはないけど、食事代くらいはありますから、遠慮なさらないでください。本当に、これからは二人で食事する時は私が払います。ファンがアイドルにお金を使わせるなんて聞いたことありますか?私は他の芸能人は好きじゃなくて、お姉様だけが好きなんです。そんなにお金も使い切れないので、私に奢らせてください。」

結局のところ、川井若菜はどうしても野村香織に食事を奢りたがっていた。野村香織もこんな人は初めてで、相手がこれほど熱心なら、これ以上遠慮するのも良くないと思い、頷いて同意した。

同意を得た川井若菜は安心した様子で、野村香織と距離を置かれることを恐れているその姿は、とても可愛らしかった。

野村香織は微笑んで「今は仕事してないの?」と尋ねた。

川井若菜は首を振った。「もちろんしてますよ。家からの毎月の仕送りだけじゃ足りませんから。」

野村香織は頷いた。「そう、他のお嬢様たちと比べると、あなたは本当に面白いわ。自分で稼いで生活できるところ、私はとても感心しているわ。」

お姉様に褒められて、川井若菜の頬が再び赤くなった。「はい、安心してください。私は自立していますし、これからもっと頑張ります。」

あの夜、警察が到着した後、野村香織は親切な市民として先に立ち去った。余計な事に巻き込まれたくなかったので、警察が来る前に姿を消したのだ。

去る前に、彼女は川井若菜たち数人の女の子を地面から助け起こし、諭すように言った。「鏡を見てごらんなさい。幽霊でも吐き気を催すような姿で。両親があなたたちを育てたのは、こんな不良になってほしかったの?それともこれが自慢できることだと思っているの?本当のクールさは、あなたたちのような姿じゃなくて、自分の人生に責任を持てることよ。」

もちろん、立ち去る前に、後から来た不良たちも全員叱りつけた。不良たちは首をすくめ、怒りはしても何も言えない様子だった。

実際、野村香織は善人ぶる人間でもなければ、正義の味方でもなかった。大多数の人と同じように、彼女も人の事には関わらない性格だった。あの夜、不良たちがやり過ぎなければ、決して余計な事には首を突っ込まなかっただろう。