第257章 2匹の蛀虫

しかし、川井輝が失礼なことを言わないはずがない。彼は失礼なことを言っただけでなく、とても不快な言い方をした。野村香織がここで働いていると聞いて、川井輝は信じられないという表情を浮かべた。「なんてこった!光文堂グループの幹部は目が見えないのか?お前みたいな人間を雇うなんて?まったく信じられない!」

言葉が終わらないうちに、斎藤雪子は冷たい声で言った。「川井社長、ここは光文堂グループです。発言には気をつけてください。野村さんは我が社の優秀な人材です」

斎藤雪子は心の中で冷笑を浮かべた。この川井輝が野村香織を軽視するということは、光文堂グループ全体を、そして彼女というグループ随一の秘書をも軽視しているということだ。はたしてサマーさんまで軽視する勇気があるのだろうか?

そう考えながら、彼女は無意識に野村香織を見た。野村香織がこの後どうするのか気になった。彼女の記憶では、野村香織にこんな風に話しかけた人は、最後みんなひどい目に遭っているようだった。

「間違いなければ、川井社長はサマーさんに会いに来たのでしょう?でも申し訳ありません。事前予約なしでは、お会いできません」と野村香織は口角を上げながら言った。

川井輝は野村香織を無視し、斎藤雪子の方を向いて叱責した。「お前なんか何様のつもり?ただの秘書風情が、私と話す資格があるのか?」

「申し訳ありません、川井社長。もう一度言わせていただきます。ここは光文堂グループです。発言には気をつけてください。野村さんは現在サマーさんが雇用した上級アシスタントです」斎藤雪子は怒りを抑えながら反論した。

彼女の警告を聞いて、川井輝は軽蔑的に鼻を鳴らした。「上級アシスタント?あいつにそんな資格があるのか?」

ついに、斎藤雪子はこの男に我慢できなくなり、入り口にいた二人の警備員に手を振り、彼らに力を合わせて川井輝を追い出させた。「川井社長、光文堂グループはあなたをお断りします!」

川井輝は体格のいい、太い眉に丸い目をした二人の警備員に外へ押し出されながら、激怒して罵った。「お前たち二人のことは覚えておけよ。俺を追い出すなんて、とんでもない話だ。押すな、俺には足があるんだぞ...」

川井輝が追い出されるのを見て、野村香織は眉を上げた。「彼はなぜここに来たの?」