第252章 帰路

野村香織が少し寂しい気持ちでいた時、ポケットの携帯電話が鳴った。取り出して画面を見ると、小村明音が撮影の休憩中に電話をかけてきたのかと思ったが、見覚えのない番号だった。

野村香織は眉を上げ、この番号は詐欺か営業電話かもしれないと思った。年末年始でもこんなに頑張るなんて、と思いながら指を下にスライドさせて電話を切った。こういう迷惑電話に時間を無駄にする気は全くなかった。

その番号をブラックリストに登録しようとした時、また同じ番号から電話がかかってきた。仕方なく、野村香織は指を上にスライドさせて電話に出た。「何を売り込もうとしているにせよ、私の答えはノーです！」

しかし、電話の向こうからとても聞き心地の良い声が聞こえてきた。「こんにちは野村社長、福島悠太と申します。小林社長の秘書です。突然のお電話で申し訳ありません」