第296章 無期懲役か死刑

野村香織は安井元樹の顔に浮かぶ意味深な表情から彼の考えを読み取り、こう言った。「安井弁護士、私があなたを呼んだのは、あなたの専門性を信頼しているからです。私の本当の考えはただ一つ、和国の法律に厳密に従って進めていただきたいということです。法律がこのような事案についてどのように規定しているのか、それに従って訴訟を進めてください」

この言葉を聞いて、安井元樹は少し驚き、眉をひそめた。野村香織の返答は彼の予想外だった。そこで再び尋ねた。「申し訳ありません野村社長、率直に申し上げますが、本当に最後まで訴えるおつもりですか?」

野村香織は笑って答えた。「安井弁護士、あなたの言いたいことはわかります。この件は私の親戚が関係していますから、常識的には脅しだけで済ませるところでしょう。でも、ご存じないかもしれませんが、私たち家族はその親戚とはもう縁を切っているんです。だから、私の決意がお分かりいただけるでしょう?」

ついに、安井元樹は野村香織の考えを理解した。答えが出た以上、弁護士として仕事を始められる。人証、監視カメラの映像も揃っている。訴状さえ書けば、あとは警察と裁判所に任せればいい。

賢明な三人が集まって話をするのは非常に快適で、10分もかからずにすべての事項を決定した。最後に斎藤雪子が自ら申し出て、野村香織の代わりに安井弁護士を警察署まで送ることになった。

野村香織は言った。「雪子、こんな遅くまでご苦労様。申し訳ないわ」

斎藤雪子は笑って答えた。「私たちの間柄で遠慮は要りませんよ」

二人を見送った後、野村香織は腕時計を確認し、座って連絡を待とうとした。しかし振り返ると、渡辺大輔が街灯のネオンの下に立っているのが見えた。彼女は少し驚いた。男は帰ったと思っていたからだ。

冬の深夜、寒風が吹きすさぶ中、渡辺大輔はそこに立って彼女を待っていた。風に赤く染まった顔を見ていると、少し可哀想にも思えた。

しかし、野村香織は彼を一瞥しただけで視線を逸らした。可哀想な振りをして同情を引こうとしているのか?残念ながら、そんな手には乗らない。

そのとき、斎藤雪子が道路を渡って戻ってきた。渡辺大輔がいるのを見て一瞬躊躇したが、責任感が勝って言った。「野村社長、そろそろ良いでしょう」

野村香織は頷き、笑顔で答えた。「行きましょう、一緒に警察署へ」