斎藤雪子はすぐに理解した。「はい、野村社長。承知いたしました」
野村香織は控えめな性格で、表に出ることを好まない。秘書である彼女はそのことをよく分かっていた。招待状が届いた以上、野村香織に一応確認せずに断るのは失礼だと思い、聞いてみただけだった。
車に乗り込んだ直後、野村香織の携帯が鳴った。小村明音からかと思ったが、川井若菜からの着信だった。少し考えてから電話に出た。「若菜?」
電話の向こうで、川井若菜は恥ずかしそうに言った。「お姉様、お電話させていただいて、ご迷惑じゃないでしょうか?」
お姉様と呼ばれ、野村香織の気分は良くなった。そこで笑顔で答えた。「もちろん迷惑なんかじゃないわ。何かあった?」
川井若菜は笑って言った。「お姉様、今週末が私の誕生日なんです。小さなパーティーを開こうと思っていて、お姉様にもぜひ来ていただきたいんですが、お越しいただけますでしょうか?ああ、4月10日なんですけど、大丈夫でしょうか?」