第370章 夏川拓海の思惑

夏川健志は三十代前半で、野村香織より六歳年上だった。毎日遊び足りない様子で、能力はあるものの、まだ成熟していなかった。少なくとも野村香織と比べると、夏川健志にはまだ差があった。

夏川拓海は今年六十六歳だった。いくら健康に気を付けていても、あとどれだけ生きられるだろうか。人生七十古来稀なりと言うが、七十六歳になった時、この地位に座っていたくても無理だろう。早かれ遅かれ北川不動産グループの全権を夏川健志に譲らなければならない。しかし、彼の観察によると、夏川健志の現在の能力では、北川不動産の天下を守るのは難しいだろう。天下を取るのは易く、守るのは難しいというが、北川不動産が発展するためには、夏川健志より優秀な人物による経営が必要だ。先日、河東での宴会で夏川健志が渡辺大輔と野村香織を巡って争った後、彼は野村香織に注目するようになった。彼は内心、夏川健志と野村香織が一緒になることを望んでいた。そうすれば後顧の憂いもなくなる。野村香織という優秀な人物が加わることで、北川不動産グループは倒れることもなく、むしろ野村香織の助けを借りて、現在以上に強大になるだろう。

そう考えてはいても、現在の野村香織と夏川健志の関係はまだ不明確だった。先ほども特に夏川健志に尋ねてみたが、この件の最終的な主導権は野村香織にあるように感じた。

野村香織は夏川拓海が何を考えているのか読み取れず、直接言った。「夏川社長、今日はお誕生日ですから、この機会に、あなたのお好みに合わせてみました。」

これを聞いて、夏川拓海は笑顔で自ら野村香織にシャンパンを注ぎながら言った。「私の好みに合わせる?野村さんは私が何を好むか知っているのですか?」

野村香織はお茶を啜りながら、夏川拓海がゆっくりと贈り物を開けるのを見ていた。彼女は優しく言った。「少なくとも、これはお気に召すと思います。」

話している間に、夏川拓海は包装を開け、小箱を開けると、翠緑の色が目に飛び込んできた。すぐに目を輝かせて言った。「おや、帝王緑の手玉ですね。これは本当に素晴らしい品物です。」

そう言いながら、彼は慎重に箱から帝王緑の手玉を取り出し、ライトに照らしてみたり、携帯のライトで照らしてみたり、手放したくない様子だった。