野村香織は褒められて珍しく顔を赤らめた。少女が本心から褒めているのが分かった。彼女はスターではないが、朝早くから美人だと褒められれば、誰だって嬉しくなるものだ。
「お嬢ちゃん、綺麗な人が皆スターになるわけじゃないの。お姉さんには自分に合った仕事や役割があるのよ」と野村香織は笑顔で言った。
「うん、お姉さんの言いたいことは分かります。私もそう思います。ただ、お姉さんがこんなに綺麗なのにスターにならないなんて、和国の芸能界にとって大きな損失だと思います。あの、お姉さん、一緒に写真を撮ってもいいですか?」と少女は尋ねた。
「お嬢ちゃん、私たち知り合いでもないのに、なぜ一緒に写真を撮りたいの?」と野村香織は不思議そうに聞いた。
「だって、お姉さんは私が生まれてから見た中で一番綺麗な人だからです。だから、この写真を記念に撮っておきたいんです。もしかしたら、お姉さんがいつかスターになるかもしれないでしょう?」と少女は賢そうな表情で言った。
野村香織は天にも昇る気持ちだった。まさか自分が、十歳も年下の少女にここまで褒められて、太陽と肩を並べるほどの気分になるとは思ってもみなかった。
野村香織は心が踊るように言った:「そういうことなら、お姉さんが叶えてあげるわ」
通常なら、彼女の性格からして見知らぬ人との写真撮影は断るはずだった。実際、彼女はこのような見知らぬ人からの写真撮影の要求を非常に嫌っていた。この綺麗な顔のせいで、幼い頃から似たような出来事は数え切れないほどあった。しかし今日は、この少女が彼女の憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれたので、一緒に写真を撮るくらいは構わないと思った。結局、彼女を喜ばせることができたのも一つの才能だ。明らかに渡辺大輔というクソ男にはそんな才能はなかった。
すぐに二人で自撮りをした後、少女はテーブルにいる夏川健志を指さして言った:「お姉さん、あの人はお友達ですか?かっこいい人だと思いますけど、でもちょっとお姉さんには釣り合わないかも」
そう言うと、少女は携帯を抱えて立ち去った。小さな顔には満足げな表情を浮かべながら、携帯の中の写真を何度も見ていた。まるで野村香織との写真撮影が、この上なく光栄なことであるかのように。