第161章 姫様

私は彼女に同情した。「かわいそうに。」

私は辺りを見回した。「じゃあ、今も周りにたくさんのボディーガードがいるの？」

麦田絵麻は頷いた。「きっといるわ。でも誰がそうなのか分からないし、知りたくもない。いないものとして扱えば、自分が自由だと思い込めるから。」

私はため息をつき、彼女の手を軽く叩いた。「感謝しなさいよ、姫様。これは誰もが持てる幸せじゃないわ。例えば平野由奈なんて、こんな生活を送る人がいるなんて想像もできないでしょうね。」

平野由奈ちゃんは入学してからずっと忙しく、アルバイトに追われて、寮ではほとんど休むことなく、普通は寝に帰ってくるだけ。彼女は経済的な苦しさを隠そうともしなかったけど、私たちの援助は断っていた。

自立心の強い良い子だ。

麦田絵麻の表情が少し和らいだ。「実は母もよくそう言うの。でも聞く耳持たなかった。うるさいと思って、ずっと小言ばかりで、本当にイライラしてた。」