南野陽太は加藤蓮の腕に寄り添い、甘えた声で何かを言った。加藤蓮の顔には特に表情がなく、少なくとも不機嫌そうではなかった。
南野陽太は、やはり手練れだ。鈴木千代と比べなければの話だが。
結局、前世で私が被った不利益はすべて南野陽太によるものだった。
前世の南野星は、鈴木千代が手を下す価値もなかったのだ。
麦田絵麻は突然、平野由奈がいなくなったことに気づいた。
「あれ、平野由奈はどこ?一言も言わずにどこかへ行っちゃったの?迷子になったらどうするの?」彼女は心配そうに辺りを見回した。
私は麦田絵麻を見て言った。「絵麻、あなた本当に変わったわね」
「え?どう変わったの?」麦田絵麻は会場中を見回しながら、私の言葉にあまり注意を払わなかった。
「六旦那はどう思いますか?」私は月島糸に尋ねた。
月島糸は考え込むように、真剣な様子で言った。「大人になったね」
私と麦田絵麻は同時に笑い出した。
「その言い方、まるで老人みたい。六旦那が絵麻の年長者みたいじゃない」と私は麦田絵麻に言った。
麦田絵麻:「これは私が受けた最高の褒め言葉よ」
月島糸は少し困ったように私たちを見ていた。
私は麦田絵麻を見つめて言った。「以前の絵麻は自分のことしか見えず、他人のことなど全く気にしなかったのに、今は平野由奈のことを心配している。これは以前の絵麻には絶対にない行動だわ。いつから他人を気にかけるようになったの?」
麦田絵麻はちょっと驚いて「そう?」と言った。
私はうなずいた。
「でも平野由奈はどこに行ったの?彼女はここに詳しくないから、誰かにぶつかったりしたら大変よ」麦田絵麻はまた我に返った。
私は仕方なく言った。「じゃあ、探してみる?もしかしたらトイレに行ったのかもしれないし」
麦田絵麻は私の手を引いて歩き出した。
月島糸はついてこなかったが、「気をつけて。今日は色んな人が来ているから」と注意を促した。
麦田絵麻はすでに私を引っ張って人混みの中に突進していた。
「絵麻、心配しないで。平野由奈は大丈夫よ」私は麦田絵麻を安心させた。
麦田絵麻はうなずいた。「ただ彼女が少し変だと思って。明らかに私たち二人を利用して結婚式に潜り込もうとしているのよ。大したことはできないだろうけど、ただ好奇心があるだけなの」