第523章 贈り物

彼と加藤律は、違うのだ。たとえ私が完全に記憶を失っていても。

でも、彼が言った、私のために刃を受け、命を落としかけたこと、それは気になっている。

命の恩は、無視できない。幸い、彼は無事で、私は何故か安心している。

デイジーが彼を招待しようとしたとき、彼は私を見て微笑んだ。「南野星、いいんだ。今度の機会にしよう。君が来たと聞いて、すぐに会いに来ただけだ。君が無事でいることを確認できて、これ以上嬉しいことはない」

彼はテーブルの上の紙とペンを取って書き始めた。

私は少し好奇心をそそられた。

彼は書き終えたメモを私に渡した。「南野星、これが私の連絡先だ。大切にしておいて。急ぐことはない、ゆっくりでいいから」

私は手を伸ばしてメモを受け取り、軽く頷いた。

メモの内容を一目見て、心の中でため息をついた。本当に何も覚えていないのだ。