第539章 呪虫

黒川さんは私をじっと見つめて言った。「お嬢さん、あなたは運がいい。私に出会えたのは幸運だよ。この毒は私以外に解毒できる者はいない。ただし、時間がかかるし、少し苦しむことになるがね。」

私はうなずいた。構わない、時間がかかるということは、まだ生きられるということ。苦しみなら、慣れているから何とも思わない。

「実を言うと、あなたたちは誰かに計略にはめられたんだ。あの加藤律が、この事件の発端だ。彼が最初に蠱毒を仕掛けられた。だが、彼の蠱毒には毒がなく、命に関わるものでもない。ただ見た目は危険で、死にそうな様子だった。彼を救うために、きっと何でも承諾したんだろう。あなたが承諾した時点で、罠にはまったんだ。あの卑しい女の目的は、あなたの血だったんだよ。」

私の——血?

私は困惑して黒川さんを見た。