032 トレンド入りした

「私の両親の物?」藤丸詩織は一瞬戸惑った後、すぐに口を開いた。「欲しい!」

藤丸詩織は周りの物が全て変わってしまったのを見て、他のことにはもう期待していなかったが、思いがけない嬉しい驚きがあった。

しかし、写真に映る懐かしい両親の姿を見た時、藤丸詩織は抑えきれず、彼らとの思い出が次々と脳裏に浮かび、涙がポロポロと零れ落ちた。

両親は交通事故で亡くなった。これほどの時が経っても、血肉が飛び散り、顔さえ判別できないほどの遺体の姿を、藤丸詩織は今でも鮮明に覚えていた。

この間ずっと、藤丸詩織はこの記憶を心の奥深くに隠し、思い出すまいとしていた。

彼女は苦痛を隠してきたが、そのせいで今になって思い出すと、押し寄せる痛みは一層激しいものとなった。

藤丸詩織が泣いていた間、榊蒼真も彼女の傍らで静かに寄り添っていた。

榊蒼真の藤丸詩織に向けられた眼差しには、深い思いやりが満ちていた。

長い時間が過ぎ、藤丸詩織はようやく落ち着きを取り戻し、同時に彼女の目は一層強い決意に満ちていた。あの年、両親を害した犯人を必ず突き止めてみせる!

見つけ出したら、決して許すことはない!

一方、桜井蓮は桜井家の別荘を出た後、会社から電話を受け、多くの書類の処理が必要だと告げられた。

桜井蓮は電話を切った後、ますます苛立ちを募らせた。

まったく役立たずどもめ。少しの間不在にしただけで、もうダメだというのか!

相良健司は桜井蓮を車に乗せた後、急いで助手席に走り、道中ずっと震えていた。

なぜか、桜井社長は奥様と離婚してから、特に気性が荒くなり、まるで一触即発の爆弾のようだった。

相良健司は怖くて自分の存在感を消すように努め、桜井蓮の注意が自分に向かないよう祈るばかりだった。

相良健司が心の中で桜井蓮に気付かれないよう祈った直後、桜井蓮の声が耳に届いた。「以前、藤丸詩織の三年前の背景を調べるよう命じたが、どうなっている?」

相良健司はその質問を聞いて一瞬固まり、恐る恐る後ろを振り返ると、思いがけず桜井蓮の目と真正面から合ってしまった。

彼は心臓が震えるのを感じながら、勇気を振り絞って答えた。「奥様が三年前に突然千葉県に現れたということしか分かりませんでした...他には何も...」

桜井蓮は相良健司の言葉を聞いて軽く笑ったが、その笑みには冷たさが漂っていた。