「私の両親の物?」藤丸詩織は一瞬戸惑った後、すぐに口を開いた。「欲しい!」
藤丸詩織は周りの物が全て変わってしまったのを見て、他のことにはもう期待していなかったが、思いがけない嬉しい驚きがあった。
しかし、写真に映る懐かしい両親の姿を見た時、藤丸詩織は抑えきれず、彼らとの思い出が次々と脳裏に浮かび、涙がポロポロと零れ落ちた。
両親は交通事故で亡くなった。これほどの時が経っても、血肉が飛び散り、顔さえ判別できないほどの遺体の姿を、藤丸詩織は今でも鮮明に覚えていた。
この間ずっと、藤丸詩織はこの記憶を心の奥深くに隠し、思い出すまいとしていた。
彼女は苦痛を隠してきたが、そのせいで今になって思い出すと、押し寄せる痛みは一層激しいものとなった。
藤丸詩織が泣いていた間、榊蒼真も彼女の傍らで静かに寄り添っていた。