水野月奈は顔を赤らめて俯き、高遠蘭子の手を取りながら、小さな声で言った。「お義母さん、私はそんなに良い人じゃありません。藤丸詩織さん、あ、いえ、藤丸さんもとても素晴らしい方です」
高遠蘭子は慌てて言い直した水野月奈を見て、先ほどの強気な藤丸詩織を思い出し、比べてみると、より一層水野月奈が好きになった。無意識のうちに一歩前に出て、水野月奈を自分の後ろに守るように立った。
桜井雨音も同様に水野月奈を守り、敵意のある目で藤丸詩織を睨みつけた。「お義姉さんをいじめさせないわ!」
藤丸詩織は三人のまるで狼から身を守るような姿勢を見て、冷ややかに笑い、真剣に尋ねた。「おじいさまは水野月奈を受け入れたの?」
藤丸詩織のその言葉が落ちると、三人の表情が凍りついた。
特に水野月奈は、当事者として、おじいさまが自分を見ようともしないことをよく知っていた。受け入れてもらえるなんて、なおさらだった。
水野月奈には、藤丸詩織が桜井桉慈にどんな惚れ薬を飲ませたのか分からなかったが、あの老いぼれが藤丸詩織こそが唯一認める孫の嫁だと言い放ったのだ!
藤丸詩織は高遠蘭子たちの様子を見て結果を悟り、さらに続けた。「おじいさまがまだ同意していないのに、そんなに仲良くしている意味があるの?」
水野月奈の目に涙が光り、次の瞬間には頬を伝って流れ落ちた。可哀想そうに言った。「おじいさまが私を受け入れてくださらなくても構いません。私は桜井蓮の側にいられるだけで十分です」
高遠蘭子は水野月奈のその様子を見て、慰めの言葉を重ねた。「月奈、泣かないで。来月には蓮と一緒に区役所に行って入籍させるわ」
水野月奈は高遠蘭子の言葉を聞いて、急いで言った。「いえ、だめです。蓮さんに無理強いはできません。それにおじいさまも絶対に同意なさらないでしょう…」
水野月奈の言葉を聞いて、高遠蘭子はますます月奈を可哀想に思った。「バカな子ね、これのどこが無理強いよ。蓮はあなたのことが大好きで、きっと早く結婚したがってるわ!おじいさまのことは心配しなくていいの」
高遠蘭子は自分の経験を例に挙げた。「ほら、私だって最初はおじいさまに反対されたけど、今はちゃんとうまくやってるでしょう?」