076 招待状

店員は残念そうに首を振って言った。「申し訳ありません、お嬢様。S.F.さんは自分の体型サイズに合わせて一着だけデザインしたんです。」

水野月奈は最初、こんなに小柄な骨格の人がいるはずがないと文句を言おうとしたが、店員の言葉を聞いて、その言葉を飲み込むしかなかった。ただ、表情はあまり良くなかった。

桜井蓮は慰めるように水野月奈の頭を撫でながら尋ねた。「サイズの変更はできないんですか?」

店員は答えた。「できません。このウェディングドレスの一枚一枚のスカートパーツは、S.F.様が高度な技術で手縫いで縫い付けたものです。もし解体してしまうと、元通りに戻すことができません。」

水野月奈は心の中で納得がいかなかったが、受け入れるしかなく、新しいウェディングドレスを選び直した。このドレスも綺麗だったが、店の目玉商品と比べると、見劣りしてしまうのは否めなかった。

桜井蓮はブライダルショップを出る前に、最上段に戻されたドレスを見上げた。彼は藤丸詩織ならそれを着られるだろうと感じた。

二人が店を出た時には、既に夕暮れ時だった。

水野月奈は桜井蓮の腕に手を添え、彼を見上げて優しく話し始めた。「蓮お兄さん、近くに新しい洋食レストランができたって聞いたんです。そこのステーキがとても美味しいらしくて、この後私たちで…」

水野月奈が言い終わる前に、桜井蓮は彼女の言葉を遮った。「ごめん、月奈。この後仕事の処理があるから、一緒に食事できないんだ。」

水野月奈は一瞬固まり、困惑して尋ねた。「でも、お昼に午後は仕事がないって言ってたじゃない。」

桜井蓮は眉をしかめた。彼はさっきそう言ったことを忘れていた。

桜井蓮が水野月奈にどう言い訳しようか考えていた時、電話が鳴った。

桜井蓮はすぐに電話に出て、「どうしました、相良秘書。」と言った。

相良健司は桜井蓮が水野月奈とデートしていることを知っていた。事情を報告しなければならない重要な用件でなければ、絶対に電話をかけなかっただろう。怒鳴られる覚悟はしていたが、予想に反して桜井蓮の冷たい声には少し喜びが混じっていた。

相良健司は言った。「桜井社長、今晚結城のお爺様がパーティーを開くということで、招待状が届いています。ご出席されますか?」

桜井蓮は「行く。住所を送るから、迎えに来てくれ。」と答えた。