079 クズ男

結城雛：「でも、あなたの遺体さえ見つからなかったから、誰かに助けられた可能性が高いと思っていたの。この三年間、何度も夢の中であなたが生きているのを見たわ。そして今、やっと本当にあなたが目の前に現れて、もう幻想じゃないの！」

藤丸詩織は黙って結城雛の涙を拭きながら、小声で慰めていた。

数分後、結城雛はようやく我に返り、少し恥ずかしそうに顔を背けながら、小声で藤丸詩織に尋ねた：「詩織、この三年間どこにいたの？元気にしてた？」

藤丸詩織は頷いてから、首を横に振った。

結城雛は藤丸詩織の動作を見て、少し困惑し、その意味が分からなかった。

藤丸詩織はそれを見て話し始めた：「あの時、郵船事故の後、確かに誰かに助けられたけど、記憶を失ってしまったの。」

結城雛は衝撃を受け、藤丸詩織を見る目は心配に満ちていた。「記憶喪失！」

藤丸詩織は頷き、続けて話した：「この三年間、頭を打って記憶を失っただけじゃなく、目も悪くなって、ある男性を好きになってしまったの。その後願い通り結婚したけど、彼には好きな女性がいて、私のことは好きじゃなかった。私への態度もあまり良くなかったわ。」

結城雛は最初まだ衝撃を受けていたが、藤丸詩織のこの言葉を聞いて、すぐに我に返り、怒りを覚えた：「あなたは綺麗で性格も良いのに、昔から誰かがあなたと結婚できたら、それは本当に運が良いって思ってたのに。まさか、そんな分かってない男がいるなんて、目が見えてないんじゃない！」

結城雛はそこまで言って言葉を止め、慎重に藤丸詩織を見つめながら、静かに尋ねた：「詩織、今でも彼のことが好き……？」

藤丸詩織は躊躇することなく、即座に否定した：「好きじゃないわ。記憶が戻った後、すぐに離婚したの！」

結城雛は興奮して拍手した：「よくやった！そんなクズ男とはすぐに別れるべきよ！ねえ詩織、その人が誰か教えて。今すぐ人を雇って懲らしめてやるわ！」

藤丸詩織は首を振って断った。

結城雛はそれを見て唇を噛み、藤丸詩織がまだその男性のことを少し好きなのかもしれないと思い、失敗した恋愛を乗り越えるには新しい恋愛を始めるのが一番だと考えた。