087 あなたたちに会いたかった

しかも森村生真は昨夜、橘三郎さんの橘譲から電話を受け、藤丸詩織のことをしっかり見守って、何も問題が起きないようにと念を押されていた。

藤丸詩織は森村生真がそこまで主張するのを見て、もう説得を諦めた。

藤丸詩織は一晩中眠れず、疲れの色が隠せなかったが、墓石の上の両親の写真を見た瞬間、今までにないほど冴えわたる意識を感じ、目を赤くしながらじっと前を見つめていた。

白黒写真は雨に打たれていたが、それでも藤丸のお父さんの温厚な様子と、藤丸のお母さんの静かで優雅な姿は隠せなかった。見る者に穏やかな時の流れを感じさせる写真だった。

藤丸詩織の脳裏に両親との思い出が次々と浮かび、彼女は地面に跪いて頭を垂れ、赤くなった目から涙がこぼれ落ちた。

藤丸詩織は啜り泣きながら言った。「お父さん、お母さん、会いに来たよ……」

森村生真は藤丸詩織のその様子を見て、自分も目が赤くなり、耐えきれずに顔を背けた。

ご夫妻はなんと優しい方々だったことか。かつてはなんと幸せな家族だったのに、今は黄泉の別れとなり、お嬢様だけが一人でこの苦しみを背負っている。

藤丸詩織の目は虚空を見つめ、まるで藤丸のお父さんとお母さんが手を取り合って、彼女に優しく微笑みかけているかのようだった。

「心配しないで、私はちゃんと自分の面倒を見られます。」

「必ず、あの時の事の正義を取り戻します。私はもう調査を始めています。証拠が出てきたら、あの時あなたたちを傷つけた人たちを絶対に許しません。きっと償わせてみせます!」

「お父さん、お母さん、会いたかった……」

藤丸詩織は確信していた。客船の爆発事件、幼い頃の叔父の治療の遅れ、そして爆発の際の両親の突然の事故、これらすべては藤丸明彦と無関係ではない。彼を突破口にすれば、きっと確実な証拠が見つかり、彼を地獄に送ることができるはずだ。

藤丸詩織の伏し目がちな瞳には、決意と憎しみが混ざり合っていた。

高遠蘭子は買い物中だったが、スパイから突然、藤丸詩織が外出したという連絡を受けた。しかも中年の男性と一緒だという。

高遠蘭子の頭の中には、すぐにさまざまな場面が浮かんだ。ただ、藤丸詩織がここまで厚かましく、お金のためなら何でもするし、中年男性さえも気にしないとは思わなかった。

かつてこんな嫁がいたと思うと、恥ずかしくなった。