131 全然気持ちよくない

藤丸詩織は両腕を組んで、冷たい目で桜井蓮を見つめながら言った。「用件があるなら直接言って。手を出すのはやめて」

桜井蓮は唇を噛んで尋ねた。「もし最初から桜井家の機密のためじゃなかったとしたら、なぜ僕と結婚したんだ?」

藤丸詩織は口を開きかけたが、桜井蓮の質問を思い出すと、何も言えなくなった。ただ彼を見る目がますます冷たくなっていった。

過去三年間、彼女の桜井蓮への優しさには何の下心もなかった。でも彼が推測する可能性の一つ一つが、彼女の真心を踏みにじっていた!

桜井蓮は目を揺らめかせ、藤丸詩織の視線を避けながら言った。「言ってくれ、君には何か目的があったんだろう?」

藤丸詩織は冷笑して、真っ直ぐに桜井蓮を見つめながら言った。「何の目的もなかったわ。ただあなたのことが好きだっただけ」

桜井蓮の目が一瞬茫然として、呆然と言った。「好き?」

藤丸詩織は断言した。「そう、ただあなたが好きだったから、優しくしていただけ」

桜井蓮の脳裏に、かつての藤丸詩織が愛情に満ちた瞳で自分を見つめていた姿が浮かんだ。しかし、今の冷静で覚めた目を見て、我に返った彼は確信を持って言った。「そんなはずない。人を好きになった気持ちが突然消えるわけがない。君は僕を騙しているんだ!」

確かに人を好きになった気持ちが突然消えることはない。結局、彼女が記憶を失っていた時でさえ、桜井蓮にさんざん傷つけられても、すぐに気持ちを立て直し、笑顔で接し、生活のあらゆる面で彼の世話を続けていた。

藤丸詩織が黙っている間に、桜井蓮は別のことを思い出した。彼は冷たい目で藤丸詩織を見つめ、「分かったぞ。君は実はお金が目的だったんだな。確か僕と結婚する時、祖父から大金を要求したじゃないか!」

藤丸詩織は今になって自分の目を疑い始めた。どうして桜井蓮のことを好きになったのか分からなくなった。この程度の頭脳なら、長く一緒にいると自分まで感染してしまいそうで怖くなった。

結局、彼女が藤丸家のお嬢様だということを桜井蓮は知っているのに、記憶喪失でもない限り、どうしてお金に困るはずがあるのか。しかも好きでもない男とお金のために結婚するはずがない。

桜井蓮は藤丸詩織の馬鹿を見るような目つきに刺激され、低い声で言った。「もしかして、僕の推測が当たっていて、認めたくないから否定しているのか?」