榊蒼真は藤丸詩織の言葉を聞いて安心し、「姉さんが私の独断を責めなかったのでよかったです。あの時、彼らの態度が気に入らなくて、そういう決定を下したんですが、全てが決まった後で、姉さんが怒るんじゃないかとすごく心配でした」
藤丸詩織は榊蒼真を見つめて真剣に言った:「心配しないで、私は全然怒ってないわ。そうそう、欲しいプレゼントを早く教えて、今すぐ買いに行くから」
榊蒼真は真剣に考えて、「姉さん、最近スーツを買ったんですが、合わせるネクタイがまだないんです」
藤丸詩織は頷いて、「わかったわ」と答えた。
藤丸詩織は運転しようとしたが、榊蒼真に止められた。「姉さん、運転は僕がします。最近仕事で疲れているでしょう。この機会に少し休んでください」
藤丸詩織も譲歩して、頷きながら「わかったわ」と答えた。
榊蒼真は片手でハンドルを握って運転した。
藤丸詩織は最近、東京の新しい店舗についてだんだん理解を深めていたので、すぐにネクタイの売れ行きが一番良い店を見つけた。
店内は豪華な装飾がされていたが、藤丸詩織と榊蒼真が入ってくると、その華やかさも霞んでしまうほどだった。
店員の一人は藤丸詩織と榊蒼真という美男美女と、彼らが醸し出す高貴な雰囲気に一瞬我を忘れ、接客しようと前に出た。
しかし次の瞬間、風見雪絵に引き止められた。「前に言ったでしょう。こういう裕福そうなお客様は勝手に接客してはいけないの。私を呼びなさい!」
店員は目を縮ませ、コネ入社の風見雪絵と争うのを恐れ、後ずさりしながら震える声で「はい、分かりました」と答えた。
風見雪絵は店員を睨みつけた後、くるりと向きを変え、藤丸詩織と榊蒼真に笑顔で「お客様、何をお探しでしょうか?」と優しく尋ねた。
藤丸詩織は風見雪絵と店員のやり取りに気付かず、同じく親切に「ネクタイを見せていただけますか」と答えた。
風見雪絵は急いで二人を案内しながら、「こちらは当店に最近入荷した新作です。ご覧くださいませ」と説明した。
藤丸詩織は壁一面に並んだネクタイを見上げ、一瞬目が眩むような感覚を覚えた。
藤丸詩織はネクタイについて詳しい知識はなく、唯一の経験と言えば、以前桜井蓮との三周年記念日にプレゼントとしてネクタイを贈った時のことだけだった。
榊蒼真は藤丸詩織の様子の変化に気付き、「姉さん、どうかしましたか?」と尋ねた。