168 カード所持者は藤丸詩織

水野月奈は目を瞬かせ、数秒後、藤丸詩織を指差して言った。「このカードは絶対に偽物よ。それとも実は榊蒼真のカードで、彼があなたに使わせたんじゃない?」

水野月奈は真相を突き止めたと感じ、再び自信を取り戻した。

風見雪絵は水野月奈の言葉を聞いて、希望を掴んだように慌てて言った。「私のパソコンで、本当のカード所有者が誰か確認できます!」

藤丸詩織は全く動揺せず、むしろ退屈そうにあくびをした。

水野月奈は風見雪絵の側に行き、急かした。「早く調べて、見つかったら大きな声でカード所有者の名前を読み上げて。」

そうすれば藤丸詩織は恥をかくことになるわ!

風見雪絵の顔色がどんどん青ざめ、震える声で言った。「VIPカード所有者は藤丸詩織さん……」

水野月奈の自信は風船のように一気にしぼんでしまい、目を見開いて驚きながら尋ねた。「何ですって?」

水野月奈は質問した後、風見雪絵の返事を待たずにレジから彼女を引っ張り出し、パソコンの画面を凝視した。そこにはっきりと表示されている藤丸詩織の名前を見て、信じられないという様子で小声で尋ねた。「どうして、どうして藤丸詩織なの?」

藤丸詩織は静かにとどめを刺すように言った。「でも事実は、私なのよ。」

水野月奈は藤丸詩織をじっと見つめ、突然また新しい考えが浮かんだようで、笑いながら言った。「カードは持っているかもしれないけど、中身はお金が入ってないんじゃない!」

藤丸詩織には理解できなかった。水野月奈の想像力がどうしてこんなに豊かなのか、様々な考えが次から次へと湧いてくる。

彼女はもう水野月奈と無駄話をする気も失せ、ただカードを読み取り機にスワイプした。

次の瞬間、読み取り機から「ピッピッ」という音が鳴り、決済成功の表示が出た。

水野月奈は完全に言葉を失った。

そのとき、中年男性の声が聞こえてきた。「入り口になぜこんなに人が詰まっているんだ?社長がいつ視察に来るかわからないのを知らないのか?早く散れ、各自の仕事に戻れ。お前たちの態度が悪ければ、私も店長として社長に叱られることになるぞ!」

店員は「店長、こちらに白色VIPカードのお客様がいらっしゃいます!」と言った。

店長の眉間の皺が解け、驚いて言った。「お客様はどちらですか、すぐにお会いしたいので案内してください。私が直接対応させていただきます!」