265 刺繍品

藤丸詩織は手首のブレスレットを見せながら、笑顔で答えた。「榊蒼真さんが先ほど誕生日プレゼントを持ってきてくれたの」

橘譲は唇を引き締めた。

藤丸詩織は橘譲の些細な仕草に気付かず、続けた。「榊蒼真さんは海外の仕事が忙しくて、プレゼントを渡したらすぐに帰っていったわ」

橘泉は「これらのプレゼントは全部彼からなのか?」と尋ねた。

藤丸詩織はその言葉を聞いて、テーブルの上の贈り物の箱を見つめ、軽く首を振った。「いいえ、これらは桜井蓮からよ」

桜井蓮?

橘泉と橘譲は眉をひそめ、次の瞬間、二人は「さっ」と立ち上がって、ドアの方へ向かった。

藤丸詩織は二人の動きを見て驚き、不思議そうに尋ねた。「二兄さん、三兄さん、どうしたの?」

橘泉は怒りを込めて言った。「桜井蓮を懲らしめてやる。昼間会った時は見逃してやったのに、夜になってまた来るとは!」